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松山地方裁判所 昭和43年(行ウ)1号 判決 1973年11月26日

松山市湯月町一の二五

原告

有限会社 湯の香旅館

右代表者代表取締役

二宮清一

松山市本町一丁目三番四号

被告

松山税務署長

(中村治郎)

右指定代理人

河村幸登

小沢康夫

大歯泰文

曾根田一雄

萩原義照

真鍋一市

土居鬼志雄

西原忠信

主文

1、原告の訴えを却下する。

2、訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一、原告(請求の趣旨)

1、被告が原告に対し昭和四二年一〇月三〇日付でなした原告の自昭和三八年三月一日至昭和三九年二月二九日事業年度分法人税にかかる所得金額を金六二九万四、八二八円と更正した処分のうち金九四万八、三八八円を超える部分および重加算税五九万三、四〇〇円の賦課決定処分をいずれも取消す。

2、訴訟費用は被告の負担とする。

二、被告(本案前の答弁の趣旨)

主文同旨。

第二、当事者の主張

一、原告の請求原因

1  被告は原告に対し昭和四二年一〇月三〇日付で原告の自昭和三八年三月一日至昭和三九年二月二九日事業年度分法人税にかかる所得金額を金六二九万四、八二八円とする第二次更正処分および重加算税五九万三、四〇〇円の賦課決定処分をなし、同年一一月二日これを原告に通知した。

2  そこで、原告は、右各処分について、被告に対し、書面による異議申立て(およびこれに続く審査請求)はしていないが、原告代表取締役二宮清一は、訴外税理士中山常雄とともに、昭和四二年一一月五日以降数回にわたり、松山税務暑に於き、係課長に対し、口頭で右各処分の不服を申立てたにもかかわらず、被告はこれを取消さない。

3  しかしながら、原告の右事業年度における法人税にかかる所得金額は金九四万八、三八八円にすぎないから、被告の右更正処分のうち右金額を超える部分および重加算税金五九万三、四〇〇円の賦課決定処分の取消を求める。

二、被告の本案前の答弁の理由

原告は、本件について法定期間内に異議申立ておよび審査請求を経ていないから、本件訴えは不適法であつて却下されるべきである。

なお、原告は、昭和四二年一一月五日以降数回にわたり口頭で不服を申立てた旨主張しているが、行政不服審査法九条一項によると、不服の申立ては、他の法律(条例を含む)に口頭ですることができる旨の定めがある場合を除き、書面を提出して行なうことになつているところ、国税通則法には口頭ですることができる旨の定めはないから、国税に関する不服申立ては書面を提出して行なわなければならないのである。しかるに、原告は書面により不服申立てをしていないことその自認するところであるから、いまだ異議申立および審査請求はなされていないこととなる。

三、請求原因に対する認否

1、請求原因1は認める。

2、同2のうち、原告が本件について書面による異議申立て等をしていないことは認める。

3、同3は争う。

理由

一、本件のような法人税法等に基く処分は、国税通則法(昭和三七年四月一日施行昭和四五年法律第八号による改正前)に定める手続に則り、同法所定の期間内(同法七六条一項により異議申立ては課税処分のあつたことを知つた日(その処分にかかる通知を受けたときはその受けた日)の翌日から起算して一月以内、同法七九条三項によりこれに続く審査請求は異議決定の通知を受けた日の翌日から起算して一月以内)に、異議申立ておよびこれに続く審査請求をすることができるから、同法八七条一項本文によれば、同項但書に定める特別事由の存しないかぎり、右処分の取消を求める訴えは、これについての異議決定およびこれに続く審査裁決を経た後でなければ提起することができない。

そして、右異議申立ておよび審査請求は、同法に口頭ですることができる旨の定めはないから、書面を提出してしなければならない(行政不服審査法九条一項)ものである。

しかるに、原告の主張によつても、右国税通則法所定の期間内に書面による異議申立ておよびこれに続く審査請求をしていないというのであつて、かつ異議決定およびこれに続く審査裁決を経ずして出訴しうる特別の事由が存在することについては、原告において何ら主張しないところであるから、原告の本件訴えは、その余の点について判断するまでもなく、不適法というべきである。

二、以上の次第で、本件訴えは訴訟要件を欠く不適法な訴えであるから、これを却下することとし、訴訟費用の負担について行訴法七条、民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 水地巌 裁判官 梶本俊明 裁判官 梶村太市)

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